Unite Tokyo 2019:ドラゴンボールのゲーム化で酷い目にあった…もとい勉強させて頂いた話

はじめに

2019年9月25日 / 26日で開催されたUnite Tokyo 2019。

私は現在仕事でも個人でもUnityを使っていないので、直接参加はしませんでした。

しかし参加した同僚から「タイムシフト視聴ならタダだぞ」という情報を得たので、気になっていた公演をいくつか拝見しました。

その一つが

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出版社とゲーム会社はなぜすれ違う?ドラゴンボールのゲーム化で酷い目にあった…もとい勉強させて頂いた話

です。リンク先から誰でも動画やスライドを見ることができるので、気になる方は是非。技術的な知識は必要ありません。

講演者や余談のような話はリンク先で動画を見ていただければ分かるので、ここでは講演の中で、ゲーム開発者として響いたところをかいつまんで記載します。


「悪いけどさ、これ捨ててくれる?」

2003年2月に発売したPS2用ソフト「ドラゴンボールZ」の話題です。

バンダイは当時、漫画もアニメもすでに終わっていた北斗の拳のゲームを発売し、懐かしさが購買欲を刺激してスマッシュヒットを叩き出しました。

そこでバンダイが次に目をつけたのはドラゴンボールでした。

この時点でドラゴンボールは原作漫画の連載やアニメが終了し、ゲームも5年ほど製作されていませんでした。

早速製作を開始したバンダイですが、なんとジャンプ編集部に全く確認を取らずに製作を進めていたとのこと。「今とは時代が違って…」とのことでしたが…

そろそろβ版が仕上がると言ったところで、勝手にゲームを製作していることを聞きつけたジャンプ編集部がバンダイの担当者である内山氏を呼び出します。

意気揚々とゲームのプレゼンをする内山氏ですが、ドラゴンボール編集者の鳥嶋氏が一言、

「悪いけどさ、これ捨ててくれる?」

ここまでで3億円もの開発費がかかっていることを説明するも、当時鳥山先生の年収が10億を超えていた事を告げ、年収10億の人に3億かかっているから…とは説得できないと一蹴。


「こーゆーことだよ、僕が言ってたのは」

3ヶ月後、キャラクターを見つめ直し、ほぼ全てを作り直したゲームをジャンプ編集部に持参した内山氏。

新しいゲームのプレゼンを行うと、鳥嶋氏は

「こーゆーことだよ、僕が言ってたのは」「じゃ、あと進めてイイから」

とあっさり承諾。わずか15分ほどの打ち合わせだったという。

鳥嶋氏曰く「コミックス完全版、クリスマス商戦のタイミングだったのでOKした」との事だったが、北斗の拳で味を占めたバンダイの驕りを見抜いた鳥嶋氏は、 改めてドラゴンボールというコンテンツを見つめ直して欲しかったのではないだろうか。


「君が作ってるの、海賊版だから」

内山氏の事件から数年後、またバンダイの別の担当者がジャンプ編集部に話を通さずに企画を進めてしまう事態が発生。

鳥嶋氏はバンダイ側の説明を聞くまでもなく、

「君が作ってるの、海賊版だから」

とこれまた一蹴。これはプロとしてゲームを作っている者にはかなり胸に響くお言葉…

その後、例に漏れずバンダイはふんどしを締め直してより良いものを作り直したそうな。

マイニングベース


IPを扱うってどういう事なんだ?

内山氏「悟空然りルフィ然り、生きたキャラクターは漫画家や編集者のみならず、マルチで展開するゲームや世界中のファンによって形作られるものである事を学んだ」

鳥嶋氏「僕は仕事で厳しい事を言うイメージのようだが、子供はもっと厳しい。子供がなけなしの100円を使ってゲームをする事を考えて欲しい」


私見(ただの感想)

漫画家や編集者にとって、漫画のキャラクターはまるで我が子のような存在でしょう。

そんな子をお借りしているわけだから、適当なものを作られたら気持ちがよくないのは当然ですし、IP全体のイメージ低下に繋がってしまいますよね。

バンナムのみならず様々なゲーム会社が、版権キャラクターをゲームに登場させています。今だとコラボという形で登場するパターンもよく見ます。

どのプラットフォームにおいても、他IPを使わないオリジナルのゲームは厳しい状況が続いています。

そんな中、IPは上手く使えば原作ファンをそのまま引き入れることができある程度の売り上げも保証することができるでしょう。

その裏に原作者や原作ファンの想いがある事を忘れてはいけませんね。